精油による空気浄化&改善

精油による空気浄化&改善

樹木系の精油での浄化作用について

Effect of Woods Essentila Oil

私達の生活環境には、多くの環境汚染物質があり、それらが原因となって引き起こされる病気が問題となっています。 そのような対策への開発が急務となっていますが、対策のひとつとして、樹木から取れる精油を空気中に拡散させる方法が期待されています。 悪臭物質の除去や、ホルムアルデヒドの除去などがわかってきています。 また、精油による香りでのリラックス効果などもあり総合的な空気質の改善が期待されています。

以下は報告されている実験結果の一部となります。
地球上には、人工的なものから自然由来のものまで様々な化学物質が存在しています。
人工的に合成された物質は、エネルギー減や産業の原料などとして使用され、私達の生活環境の向上に大きく貢献してきました。
しかし、その物質の一部には、健康に悪い影響をもたらすものもあり、社会問題化しています。
そのため、低減化が重要視され始め、また、環境への配慮を考慮した環境との調和型の研究や開発も盛んに行なわれています。

その中のひとつに、「精油」があります。

樹木から抽出された精油に焦点を充てた、研究例を記載します。
生活環境の空気質汚染とその対策技術
空気質の汚染について:
空気は毎日の生活にとって欠かす事の出来ない重要なものです。
私達の日常で取り入れている、汚染された空気(そうでないエリアもあります)の有害物質は、指針値(厚労省が定めるもの)が定められているものがあり、 その濃度は数ppmと微量ではありますが、日常生活で日々、取り入れていると(成人が一日空気を取り入れる量は約20㎥で24kg相当と言われています) 健康の影響が懸念されます。

また、室内の臭いについては、
体臭、たばこのにおい、生ゴミのにおい、排泄物のにおいや建材のにおい等の他にも、住宅資材から放散する揮発性の有機化合物が、 色々な病気を引き起こす要因にもなっています。
外では、自動車や工場の排煙(二酸化窒素)が問題になっています。

二酸化窒素の健康への影響は、咳や痰の増加、高濃度の場合だと急性呼吸器疾患、最近では花粉症の症状との関連性もわかってきています。

対応策としては、発生源の対策、換気や消臭、空気清浄機などがあります。
しかし、現有の悪臭、有害物質の浄化法としては、高性能フィルターや活性炭のような消臭、
脱臭剤や空気清浄機など待ち受けて浄化する機構の方式が多く限られた空間の浄化に適するなど効率の点で改善が必要であり、
また製造コストや使用後の処理などでコスト高となっています。

そこで、より安価で浄化効率が優れた方法として香り成分による方法が提案されています。
香り成分は一般的に常圧下で加温することで揮発するため、空気中に噴霧し浄化能を発揮させる事が出来、 このような利用法に適している浄化能の高い香り成分などの抽出に関する研究が盛んに行なわれています。

悪臭・有害物質に対して浄化機能を有する物質:
アンモニアなどの悪臭やホルムアルデヒド等の有害物質に対して特異的に除去できる香り成分を以下に記載致します。
樹木精油による悪臭物質の浄化機能
◆硫化水素
ヨーロッパモミの葉から抽出される精油

◆トリエチルアミン(常温では強アンモニア臭を持つ無色で揮発性のある液体)
シダーウッド精油、パイン精油、シナモン精油、テレピン精油、カシア精油

◆アンモニア(60ppm)に対して90%以上の除去率
◆二酸化硫黄に対して5%の精油濃度で100%の除去率
◆酢酸に対して20%の除去率
ヒノキ精油、トドマツ精油、ヒバ精油
(※1)


●植物抽出物による悪臭物質の浄化機能
◆エタノールのトリエチルアミンに対して70-90%の除去率
緑茶、どくだみ精油、ラベンダー精油、柿の葉精油
(※2)

緑茶の除去活性は中和、付加などの他にポリフェノールの反応性、すなわちフェノール其を有する化合物は多くの錯体化合物を生成する特性がある為 硫化水素、アミン類などと結合しやすく、ポリフェノールの三次元構造の内部に悪臭分子が取り込まれると考えられています。
また、スパイス、ハーブのメタノール抽出物のメチルメルカプタンに対する除去効果が検討され、セージやローズマリーの成分である、アルノソール やスオウの成分であるブラジリン、紫根の成分であるシコニンなどのフェノール性成分が優れた除去効果があることが報告されています。(※3)
樹木の樹皮に多い、縮合型タンニンでは、たんぱく質吸着作用、重金属吸着作用、及び悪臭、有害物質除去作用が見出されています。
アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの除去作用については、アンモニアに対してはアカシアタンニンが最も効果的であり、 ホルムアルデヒドに対しては、カテキンやカラマツタンニンが顕著な除去活性を有することが判明しています。
(※4)
樹木精油によるホルムアルデヒドの浄化機能
シックハウス症候群の原因物質の一種にホルムアルデヒドがありますが、その除去対策として様々な方法が開発されており 植物成分としては、タンニン、フラボノイドなどが見出されています。
Fig.1は11種類の樹木由来の葉、及び材の精油(香り物質)及び、代表的なそれらの抗生物質によるホルムアルデヒドの 除去活性を示したものです。

葉の製油と木材の精油を比較すると、葉の精油の方が、木材の精油より除去活性が高い傾向にあることがわかりました。
◆供試した精油の中で除去率は60%を超えたもの
スギ葉の精油、モミ葉の精油、トドマツ葉の精油、ヒノキ葉の精油

特にスギの葉の精油は供試試料中で最も除去活性が高いことがわかっています。(※5)
精油類による物質の除去機能については不明な点も多く残っていますが、マスキング効果の他、精油成分との化学反応による捕集効果等が考えられています。
(※6)

樹木精油による二酸化窒素の浄化機能
植物には環境に適応する為の能力、例えば二酸化窒素、揮発性有機化合物、ホルムアルデヒド等を生きた植物が代謝の過程で浄化する能力があることが知られています。 (※12-15)
樹木の代謝物質のひとつである精油は、最近研究が進んでいます。

樹木精油の二酸化窒素浄化機能
精油による二酸化窒素(7ppm)の除去活性を調べた結果

供試した精油(トドマツ葉の精油、ヒノキ葉の精油ユーカリ葉の精油、スギ葉の精油、ヒノキ木部の精油、スギ木部の精油)
のいずれも系内の二酸化窒素濃度が低下
混合後30分でトドマツ葉の精油による除去率が86%と最も高い値
次いでヒノキ葉の精油ユーカリ葉の精油、スギ葉の精油の順となりました。

葉の製油と木材の精油を比較すると、葉の精油の方が、木材の精油より除去活性が高い傾向にあることがわかりました。

トドマツ葉の精油に含まれる活性物質に
モノテルペン類が見出されました
これらの物質の化学的な特徴
1.4シネオールを除いて二重結合を分子内に2個以上有する。(※16)

二酸化窒素の浄化能の高いテルペン類の捕捉、除去機構としては、
①ニトロ化、あるいはニトロソ化された新規生成物の生成、(ニトロ化・・・有機化合物の分子中の水素原子をニトロ基に置換する化学反応)
②二酸化窒素が精油成分により酸化あるいは還元され、酢酸、亜酢酸、一酸化窒素の生成、などが考えられていますが(※15) 新規生成物、酢酸、亜酢酸の生成は確認されず、一酸化窒素の濃度変化はほとんどなかったとの事です。(参:1)

この他、樹木の樹脂成分による二酸化窒素浄化能に関する研究も行なわれており、
abietdieneなどのジテルペン炭化水素が優れた浄化能力を有することが判明しています。(※23)



(※1)谷田貝光克、大平辰郎;針葉抽出成分の用途開発、バイオマス変換計画研究報告書24,36-71(1990)
(※2)川内二郎、宮本幸輝;植物抽出物による消臭作用フレグランス ジャーナル65 82-85(1984)
(※3)常田文彦;植物抽出物の消臭作用と効果フレグランス ジャーナル72 59-63(1985)
(※4)大原誠資;タンニンの機能 樹皮タンニンの多彩な機能と有効活用 八十一出版東京2005 pp.25-34.
(※5)大平辰郎,谷田貝光克;ホルムアルデヒド類の捕集方法と捕集装置。特許3498113号(2003)
(※6)井本稔,垣内弘,黄慶雲;炭化水素との反応ホルムアルデヒド、朝倉書店,東京1965pp.102-127
(※7)福寿厚,小林秀次,市来正義,秋山正樹;二酸化窒素除去用触媒および二酸化窒素除去方法、特許平8-274448(1996)
(※8)梶間智明,鈴木良述;アルカリ添着活性炭による空気中の二酸化窒素の除去、日本建築学会計画系論文集No.539,51-58(2001)
(※9)飯島勝之,山下岳史,藤澤彰利,松本充史;二酸化窒素除去材、特開2007-38076(2007)
(※10)高安輝樹,新井照男,小野田金児;光触媒材料による分解除去方法、特開2012-11372(2012)
(※11)環境省ホームページ;窒素酸化物削減に関する技術リスト、20141年10月2日参照
(※12)藤田富雄、長尾仁、山内四郎、安田昌弘、朝野秀照;NOxを含有する被処理ガスの脱削方法、特願2011-137278(2011)
(※13)安田仁資;大気の汚染”やさしい環境科学”、科学同人、東京、1996,pp.64-65
(※14)小川和雄、高野利一;植物群落の大気浄化効果に関する研究 埼玉公害センター年報、NO.12、45-51(1985)
(※15)辻野善夫;スギ材による空気質の改善 におい、香り環境学会誌42(1)8-16、(2011)
(※16)大平辰郎;樹木精油による環境汚染物質の除去AROMA RESEARCH13(4),308-312、(2012)
(※17)LeeA.,Golstein,A.H.,Keywook,M.D.,Gao,S.,Varutbangkul ,V.,Bahreini,R.,Ng,N.L.,Flagan R.C.,Seifeld,J.H.: Gas-phase products and secondary aerosol yields from the ozonolysis of ten diffrent terpenes.J.Geophys.Res.111(D07302),1-18(2006)
(※18)大平辰郎,松井直之,金子俊彦,田中雄一;香り成分による二酸化窒素の捕集・除去機構1生成する粒子物質の特性について 第二十五回におい香り環境学会講演要旨集,草津2012、pp.111-112
(※19)大平辰郎,松井直之,金子俊彦,田中雄一;香り成分による二酸化窒素の捕集・除去機構2生成する粒子物質の観察と生成挙動 第二十六回におい香り環境学会講演要旨集,東京2013、pp.104-106
(※20)岩崎みすず,八木俊介,田結庄良昭;2003年4月と9月に神戸市で採取した浮遊粒子状物質の個別粒子分析・大気環境学会誌42(3)200-207(2007)
(※21)秋山賢一,下野彰夫,Worsnop,D.;高分解能ソフトイオン化エアロゾル質量分析計の開発)自動車研究27(6),239-242(2005)
(※22)三好猛雄,高見昭憲,下野彰夫,畠山史郎;エアロゾル質量分析計により沖縄県辺戸岬において観測されたエアロゾル化学組成の特徴・大気環境学会誌48(1)1-11(2013)
(※23)大平辰郎,松井直之,小藤田久義,後藤まなみ,辻村舞子;スギ材乾燥廃液を利用した環境浄化材の開発(1)第64回日本木材学会大会研究発表要旨松山2014,M13-P-23(CDROM)
(参:1)テルペン類の大気化学的な反応性に関する研究例(※17)を参考にして、反応後の系内の空気質について調べたところ、 モノテルペン類は二酸化窒素との反応により、速やかに粒子状物質(PM Particle Materials,エアロゾル) を生成していることが確認されたそうです。(※18-19)
走査型プローブ顕微鏡による観察によりその形状は複雑であるが概ね球状を呈していました。(Fig.5)(※19)
大気環境について観察された粒子は基になる物質の種類も多数あるため、その形状も球状以外に繊維状、角ばった状態のものなどが観察されています。(※20)
粒子状物質の生成挙動は、二酸化窒素の除去率の高い物質ほど生成する粒子物質の平均粒径が大きく、かつ粒子検出用開始時間がおおむね0.1分と極めて速かったそうです。
また、有機粒子や含窒素粒子の質量濃度の比(有機粒子や含窒素粒子)は16.8-20.0であり除去率が高い物質ほど大きい傾向にあることが判明しました。(Table2)
このことから除去率の高い物質は二酸化窒素と接触後、極めて速やかに粒子状物質を生成し、これらの粒径は急速に拡大し、生成する粒子 状物質の組成も有機粒子の割合が多い状態になりやすいことがわかっています。(※18-19)
生成した粒状物質の化学組成iついてはほとんどが未解明であるが、近年ソフトイオン化質量分析手法などが開発されてきており、徐々にでは あるが、その正体が明らかにされてきています。(※21-22)
大気中に浮遊しているエアロゾル粒子は、人体等への健康影響、地球の温暖化への関与、大気環境などへの影響が懸念されており 粒子の化学組成などの詳細な究明が急務となっていることから この分野の研究は急速に進むと思われます。
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